
2017-09-16
常に問題を考え続けるから、ひらめきが生まれる
音の抑揚、旋律とリズム。
その曲は郷土の情景を思い出させ、またある曲は青春時代を思い出させ、またある曲は共感や前向きな姿勢、勇気、感動を与えてくれる。
人それぞれにある「名曲」。
昭和歌謡界を代表する作曲家である国民栄誉章を授与された遠藤実さん。
生涯に渡りヒット曲を生み出し、「北国の春」「高校三年生」「こまっちゃうナ」など数々の名曲を世に送り出しています。
5,000曲以上もの作曲をした遠藤さんは、その曲の多くが作曲をしようと取り組んで創作したものではなく、日常生活の中から自然とメロディーが思い浮かんだというから驚きです。
例えば移動中の汽車の中、そこから見えている風景が自然とメロディーとして生み出され、頭の中で構築し、曲として生み出されるのだそうです。
その曲は、聞き手がまるで汽車の中から見る情景を思い描くような曲なのでしょう。
人間の意識には意識的に自由に使える意識「顕在意識(けんざいいしき)」と無意識のうちに使っている「潜在意識」があります。
「顕在意識」は考えたり、悩んだり、不安になったり自覚している意識であり、また視覚や聴覚など五感を管理し、自分を取り巻く環境の情報を集め、分析や比較などから総合判断をして行動に移します。
つまり、人間の肉体を維持する為にある意識と言えます。
一方「潜在意識」は出生から今まで得た「顕在意識」の情報のデータベース。
自転車の運転を思い出してみてください。
乗り始めの頃は、ペダルのこぎ方、ハンドル操作、バランスの取り方など全て意識していないと進めませんでした。
しかし、自転車になれてくると意識していなくても体が勝手に動いているのは「潜在意識」によるものだからです。
また、直感やひらめきを生み出すのも「潜在意識」によるものです。
見るもの・聞くもの・触れるもの、全てを仕事に繋げる技術、これは天性のものと言えるでしょうか?
飯豊連峰の麓、小国の隠れ家ともいうべき場所に月に一度は私が足繁く通う食堂があります。そこで決まって頼むのが「岩魚の天ぷら蕎麦」。
香りと長さで一目に手打ちだとわかる蕎麦、口に運ぶと更に広がる蕎麦の香りと想像以上の歯応えとコシ。
さらに、蕎麦の力強さに負けない位絶品なのが岩魚の天ぷら。
普通は魚の天ぷらとなると、水分が多くベチャッとした食感になるのですが、ここの岩魚の天ぷらはサクサク、フワフワの食感。
頭から食べられるように、真冬にエラと腸をとり、塩を刷り込み寒風干しにする事一週間。余分な水分を抜き、旨みを凝縮させているそうです。
一つの料理にここまでの手間をかける事に、私は感動しました。
手間と味が比例する。
これは、料理に限った事だけではなく、ものづくりをする全ての業界に通じるものではないでしょうか。
そして、この食堂の店主は色々な料理の創作にチャレンジしています。
先日もお邪魔した時に、「これ食べてみてください」と出された創作料理も絶品でした。
「どうしてこんな美味しいものをつくれるのですか?」
そう尋ねると、「こんなものつくってみたい」と考えていると、ある日突然閃くそうです。
食材の配分や味付けは全て直感。自分で納得できるまで挑戦するのだとか。
自分の思い描いたものを、形にし、感動させるのがプロの成せる技なのです。
ものづくりを携わる者として、私も共感しています。
いつも「良いものをつくろう」、そう常に考えている人にしかその答えは出てきません。
食事をしている時でも、入浴中も運転中も、どうすれば「お客様が喜んでくれるか」「今よりももっと良いものがつくれるのではないか」
完成のない完成を求め、四六時中考えていました。
常に「潜在意識」に植えつけていた事で、意識していなくとも日頃より仕事のアイデア、ヒントを得ようとする行動を取っていたのだと気付かされます
見るもの・聞くもの・触れるもの、全ては仕事に繋がります。
良いものに人は求め、良いものに人は感動するのが道理。
その道を究めた人はいくつになっても感動する心を失いません、
その感動を求める力が感動を求める人に感動を与えてくれるのです。