
2014-02-22
偉大なる大将
日一日と日が長くなり、気候も緩やかに季節の変わり目を感じさせます。
出会い、そして別れの季節。
春の足音はもう目前にやってきているのではないでしょうか。
去る2月15日金曜日午後1時、東京都港区芝公園に私はいました。
かの徳川家の菩提寺である「増上寺」そこへ「偉大なる大将であり人生の達人」の最期を見届ける為です。
船井総合研究所創業者・船井幸雄会長、享年81歳。
経営コンサルタントのトップを走り続け、業界の道を極めた人物です。
「何が良く」て「何が悪い」のかを見抜く力に長け、その才能は経営だけに留まらず、販売戦略(商品等の色の対比、陳列の寸法の比率など)や心理学にも及びました。400冊以上の著書も執筆していたと記憶しています。
私個人としても公私にわたり大変お世話になり、住宅づくりに於いて活かせる事や、多くの「人生の教訓」を学ばせていただきました。
どんなに富があろうと質素倹約で、奢らず、威張らず、穏やかで接する人の器に合わせる度量があり、自分に厳しい人でした。
経営者として考え方・生活、人生を歩んで行く上で辿り着く先が「シンプルに生きる」事。
船井会長より学ばせていただいた事の一つです。
こんなエピソードがあります。
今から10年ほど前、船井会長より御依頼があり、船井会長の本宅をお世話になる機会がありました。
私は、「さぞ大きな豪邸を建ててくれるのだろう」と喜び勇んで足を運びました。
しかし、お話しを伺い、私は呆然としたのです。
総工費の予算が私の予想よりも大幅に少なく、さらに熱海の建築予定地は傾斜で、崖を平らにする所から始めなければなりませんでした。
結果として、総工費の1/3を基礎工事だけで費やす事になり、上物に投じる予算が減少する状況でした。
「船井会長、もっと予算を下さい」私は直談判しました。
しかし、船井会長は「赤塚さん、当初予算のままお願いします」と頑として譲りません。
意気消沈、肩を落として新潟の帰路へ着くと、船井会長より1通のFAXが届いていました。
文面に書かれていたのは徳川家康「大将のいましめ」。
拝読していくうちに、私の心の奥、まるで魂を握られるような感銘と共感に浸りました。
~ 徳川家康 「大将のいましめ」 ~
大将というものは
敬われているようでその家来に絶えず落度を探られているものだ。
恐れられているようで侮られ、親しまれているようで疎んじられ、好かれているようで憎まれているものじゃ。
大将というものは
絶えず勉強せねばならぬし、礼儀もわきまえねばならぬ。
よい家来をもとうと思うなら、わが食へらしても家来にひもじい思いをさせてはならぬ。
自分一人では何も出来ぬ。
これが三十二年間つくづく思い知らされた家康が経験ぞ。
もう何十年とこの徳川家康の教えを守っていると一言付け加えられていました。
「人生の達人」とは質素倹約し、目標を立てて生きる。と昔から、少なくとも江戸時代から決まっていたのです。
余談ですが、生前、御夫婦で私共の管理する山荘へお越しいただいた際、20年も前から着用しているトレーナーとカバンを当時も大事に使っていて、奥様に呆れられていました。
それよりも私は、物を大切にする心と倹約の姿勢に驚かされました。
小雪が舞う東京都港区芝公園、厳かに運ぶ式次第と1500名を超える参列者に改めてその「偉大さ」を痛感しました。
故人を偲び、多くの感謝を伝え会場を後にしました。
船井幸雄会長、お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。
心より御冥福をお祈りいたします。