
2013-11-21
職人の魂に誓って
日本のものづくりの魂は何処へ向かっているのでしょうか。
連日のように報道されている食品偽装問題を巡る報道は、ある旅館から始まり著名なホテル、百貨店にまで相次ぎに発覚しました。
「大変申し訳ありませんでした」
謝罪会見、その一部始終を見る度に悲しい想いに駆られます。
産地の偽装、食品の素材そのものの偽装、中には「偽装ではなく誤表示です」と言い逃れをする始末。
この一連の問題に携わった職人達は、一体どんな気持ちだったのでしょうか?
私にはどうしても、彼らが一番の被害者だと思えてならないのです。
職人は元来「職人の魂」というものを持っています。
良い(本物)材料を吟味し、その材料を最大限に活かす技術に長け、妥協や嘘を最も嫌います。
しかし、使用人であるが故に経営陣の意のまま、人を騙してまでも利益を追求しなければならなかったのだと推測できます。
経営者の体質が、ただ目先の利益を求めた結果、「信用・信頼」を簡単に壊してしまう事態に発展しています。
何代にもわたって続く老舗でさえも「信用・信頼」が崩れるのは容易です。
反対にそれを築き上げるには、相当な努力が必要でしょう。
住宅業界でも同じ様な事が言えます。
職人大工の本音は工業製品(新建材)を使いたくはありません。
大工ならば、本物の材料で、その材料の特性を活かした住宅づくりをしたいのです。
なにより、「職人の魂」のある大工は人を感動させる技術を持ち合わせています。
近年、工業製品(新建材)の住宅が主流となりつつある住宅業界にさらに拍車をかける出来事がありました。
2000年4月より消費者保護の観点から施工された「住宅品質確保促進法」。
構造や設備などの欠陥を予防し、基本構造部分について10年間の瑕疵担保責任を義務づけた法律です。
柱や梁など住宅にとって主要な部分の木は狂ってはならないのです。
これにより、利益優先の大半のメーカーや工務店は、扱いの容易な工業製品(新建材)に走りました。
そして、多くの住宅が工業製品を扱っている為に、暖かみのない木材の性質が失われた偽物を、あたかも本物の木のように錯覚させられているのが現状です。
「ものづくり」ではなく、「物売り」を優先する天然木を扱う業者もいます。
お客様に木の捻じれやひび割れ、反りや縮れは天然木の特性だからと木を狂わせない努力もせず法律を無視し、販売する業者がいます。
「人を欺いて錯覚に陥れ相手に損害を与える行為」これは立派な詐欺罪であり、法律に反しています。
嘘がまかり通り、誰を信じていいのかわからない世の中、人が人として安心して生きていける、そんな当たり前の世の中を取り戻さなければなりません。
その為には、お客様に商品を提供する企業、ならびに従業員一人一人が「職人の魂」を持てる仕事をしなければなりませんし、経営者はその環境づくりと教育を怠ってはならないのです。
すべては、経営者の「職人の魂」にかかっています。