
2019-02-15
後悔しない選択
人生に影響を与える大きな転換期、ターニングポイント。
今後の人生を大きく左右する人生の分岐は、誰にでも幾度となく必ず訪れるもの。
進学、就職、転職、結婚、疾患、挫折・・・・。
当たり前だった日常が、ある日突然新たな局面を迎えるタイミング。
しかしその局面には、幸運やチャンスが訪れる出来事よりも、困難や苦悩、歓迎し難い出来事が訪れる事の方が多いのではないでしょうか。
木や自然から、人間は多くを学ぶことができます。
例えば、杉の木の横断面には同心円状の輪があるのはご存知だと思います。
そこは厚みがある色の薄い層(夏目)と厚みのない色濃い層(冬目)とで交互に構成されています。
夏目は春から夏にかけ、生命のエネルギーが躍動するかの如く栄養をとり、成長が著しく多くの細胞ができる為、太く柔らかい層になりますが、冬目は秋から冬にかけ、栄養がとりづらくなる為、夏目に比べ細胞は少なく硬い層になるのです。
時と共に繰り返されるこの層の形成を「年輪」と呼び、一般的には目が詰まっていて、密度の高い年輪の木ほど強度があると言われています。
そして、程よい厚みの夏目がある木には狂いも少なく、見た目も美しいとされています。
夏目・冬目どちらか一方でも欠ければバランスが悪くなり、木材としてとても扱い難いものになってしまいます。
木に年輪があるように、人間にも人生の年輪があります。
木は幾多の厳しい冬を耐え、乗り越えてきたからこそ希望の春を迎えることができます。
もし、人間が冬目のような苦労や厳しい困難を避けて通り、年中悠々自適に安逸を貪るように生きていれば、社会に出た時にその荒波に揉まれ精神的にも倒れてしまうことでしょう。
結果として扱い難い人材となるかもしれません。
人生の年輪は、人生を歩む中で積み重ねてきた経験。
特に若い時に経験できる苦難の冬を乗り越えていけば、将来どんな風にもびくともしない大きな根となり成長することでしょう。
私にも20代の頃に経験した冬目があり、その経験が私の人生のターニングポイントとなっています。
それは42年前の26歳の頃、大工として若さに身を任せ、がむしゃらにものづくりに明け暮れていた日々に突如襲われた悲劇、椎間板ヘルニア。
動くこともままならず、県立病院の病室から天を仰ぎ続けて1ヶ月。
不安が絶望に変わり、様々な想いが頭を駆け巡りました。
「大工を続けて行く事ができるのだろうか、大工を辞めたら自分に何ができるのだろうか、このまま寝たきりの人生になるのではないか、生活はどうなるのか。」
しかし、死を覚悟する程の窮地に追い込まれる試練を与えられると、人間はそれを乗り越えようと必死に考えるものです。
不屈の精神は新たな目標を定め、人生観を前向きに転換し、肉体労働とは別の「営業」と「人を使う」という事をその時身につけました。
大工で請け負うと、例えば1日2棟こなすのが精一杯でしたが、10人いれば1日20棟こなすことができるようになります。
1人でこなせば10年かかるような事も人を使えば1年でできるようになる事に気付きました。
さらに、人生を転換する程の前向きなエネルギーで人生を取り組んでいると、有難い事に生き様に感動してくれる多くの協力者が支えてくれる事にも気付かされました。
まさか、一大工が世界的著名人の方々とお付き合いできるとは当時考えもしなかったことです。
今、夢ハウスの従業員は300人であり、夢ハウスビジネスパートナー加盟店は全国で400社を超えます。
この大衆が衆知を結集し、同じ目標を共有すれば何十年とかかる「本物のものづくり」への構想も1年で成し遂げられることでしょう。
あの時腰を痛め入院するような事がなければ、今も職人として大工で生計を立てていたと思います。
振り返れば、あれが私の人生のターニングポイントでした。
当たり前だった日常が、ある日突然新たな局面を迎えるタイミング、ターニングポイント。
人生の分岐が即座に求められるような場合、常に最良の選択ができるわけではありません。
また、過去には戻れない以上、別の選択肢が最良であったとも言い切れません。
いざ、自分がその局面に立たされた時に、後悔をしない選択をする事が果たしてできるのでしょうか。
その問い関して、「後悔をしない選択は出来る」と私は考えています。
「あの時、こうしていればよかった」
後悔をする・しないの原因は「迷い」と「経験」の不足だと思います。
「5年後、10年後自分はこうなっていたい」、「人生の最後はこういう人でありたい」。
つまり、目標や将来の人生像を持ち、それを達成する為に行動していれば自ずと「経験」は積み重なり、「迷い」はなくなります。
やるべき事がある以上、結果として後悔をしない選択をしているはずです。
明けない夜はありません。
越えない冬もありません。
春の兆しは三寒四温。
まだ薄暗さの残るいつもの時間に、出勤前の身だしなみ。
鏡に映る仏頂面に笑顔を贈れば、深く刻まれた年輪の痕。
私にはそれが、照れくさくもあり、誇らしくもあるのです。